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sink or swim

音楽に関するレビューやインタビューを細々と公開しています

sink or swim?

SENPUKU KAKUHEN 2ndAlbum「SENPUKU KAKUHENの夏休み リターンズ」リリースインタビュー

その昔、キューン主催のオーディションでわりと良いところまで残ったこともある2人組ユニットSENPUKU KAKUHEN。空白の4年間を経て2ndアルバムがリリースされたのに際し、未だ謎が多い彼らについて結成の経緯などから詳しく知るべくメンバーの八代・ユダ両名にツイキャスというハイカラな方法でインタビューを試みた。(写真上が八代・写真下がユダ)

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―昨日はお疲れさまでした。(インタビューの前日SENPUKU KAKUHENは下北沢ろくでもない夜で行われた北枕ふか子さんの生誕祭ライブに出演していました)

八代・ユダ:ありがとうございます。

―改めて自己紹介をお願いします。

八代:SENPUKU KAKUHENのボーカル担当の八代(@yashiromasa8)です。

ユダ:同じくSENPUKU KAKUHENのトラックをたまに作ってますユダ(@Iscariot013)です。

※以下、SENPUKU KAKUHENはSKと表記

 

【SENPUKU KAKUHENの結成~第一期】

-2011年の冬に僕がパチンコで大勝ちして-

―では結成の経緯からどうぞ。

八代:2011年の冬に僕がパチンコで大勝ちしてGibsonのJ-45というアコギを買いまして。そこで何か録音物を残したいなと思ったところユダ君はDTMが出来るということで家に行ったのがキッカケです。ユダ君の家は元・中華料理屋さんで、使ってないガレージの様なスペースがあってそこで音を出せるから録音しようという流れになりました。

―筆者は高校の頃から二人のことを知ってるんですけど、すごく仲が良いっていうイメージはなかったんですが…。

八代:でも毎日お昼ご飯は一緒に食べてましたよ。いつからかは正確に覚えてないけど。

ユダ:僕は…それが八代くんとの記憶あんまりないんだよね…。(笑) まあでも八代君に会うために高校行ってたようなもんですよ!(笑)

―なるほど、お互いに親交はあったと…。(笑) では八代くんはユダ君がDTMをやれるっていうのは知ってたんですか?

八代:なんとなく…。

ユダ:僕、楽器とかは演奏できないので録音が出来るってことくらいのものですね。

八代:ユダ君、弟の方がラップ上手いし才能あるんですよ。スペック高い。

ユダ:ICUに行ってて合唱部というかGleeクラブ入ってたり凄いんですよ(笑)

―凄い…。ちょっと脱線しましたね。(笑) 続きをどうぞ。

八代:あ、思い出してきた。当時地元で仲良い人たちがバンドを組んでいて、その人たちのところに遊びに行って明け方まで麻雀やってたりするとなんとなくバンドのミーティングが始まるんですよね…。それで仲間に入れてもらえないなーみたいな気持ちから、僕もなんかバンドみたいなの組みたい…って思ったのも結成のキッカケにはなってます。

ユダ:知らなかった…。

―SENPUKU KAKUHENという名前はいつごろ決まったんですか?

八代:最初の方に「It’s So Free」という曲が出来て、その後ある程度曲が溜まったところで「オーディション的なものに応募したい。ユダ君なんか探して。」っていう段になってからだと思います。第一期の活動は主に大学の長期休み中に行われたので、2011年の冬に音源制作とオーディション応募、2012年の夏にライブを何本かという感じでした。

 

【空白期間~再開まで】

-自然消滅から次に連絡取るのが三日後なのか一年・二年後なのか-

―ではその後2012年の夏以降、昨年の活動再開まで約4年の空白期間のことを教えてください。

八代:僕はソロ活動を行っていました。ライブをやったり、ソロで音源を作ったり。ユダ君ともほとんど連絡は取っていませんでしたが、特に喧嘩別れということもなく。

ユダ:僕も大塚のライブハウスなんかで、自分でDJしつつラップするという形で音楽活動はやっていました。あとは音楽以外にも文学方面でフリーペーパーを作ったり…そこでライブに誘って頂いた北枕さんとも知り合いになりました。SK自体もただ自然消滅という感じで…八代君と疎遠になったわけでもなく、ただその自然消滅から次に連絡取るのが三日後なのか一年・二年後なのかというだけですね。

―活動再開に至った経緯を教えてください。

八代:僕がAbleton liveというDAWを買いまして、これがユダ君のやってたやつか…なんか孤独に作業するのもなんだしなという気持ちと、その時に溜まってたルサンチマン(支配者や強者に対しての恨み)を吐き出したいけど自分ひとりでそれをやってしまうと一方通行の主張にしかならないので、そういう表現を相対化(他者も交えた視点で見つめ直す)する為にバンドというフォーマットを選びました。そこでユダ君と再びやろうとなったのは、彼は僕のマインドに感化されない芯のある考え方を持った人間だったからというのがあります。他の人だとやはり自分に寄せてきてしまうところがあったので、そういう意味でもユダ君への信頼があった上での選択です。

 

【アルバム制作にあたって】

-自分の色を出さない代わりに積極性も出さんぞっていうスタンス-

―いきなりアルバムを作ろうという流れで始まったんでしょうか?

八代:アルバムを作るというのは念頭に置いていました。いたんですが、まずSKの夏休みリターンズが出来て、そこから2~3カ月空いてヒロインが出来上がって…その時にこのままのペースはまずいな、制作ペースを速めないと、ということになり週刊で発表していくのもええやろって感じで週刊連載が始まりました。

―その時ユダ君はどういったお気持ちだったんでしょうか?

ユダ:僕としては、あくまで受け身の立場は崩さず。それはつまり自分の色を出さない代わりに積極性も出さんぞっていうスタンスだったので、八代君のこういう提案にも「わかりました。やれることはやります。」という気持ちでしたね。

 

【曲・ラジオ・漫画というメディアミックス的手法について】

-現代ではその人のキャラクターにお客さんが付く-

―週刊連載にあたって、曲・ラジオ・漫画というメディアミックスのような展開がとてもユニークだなと思ったんですがこれについてお聞かせください。

八代:僕はあんまりツイッターが好きではないんですけど、TLに流れてくる漫画だけは唯一楽しいなと思っていて…合わせてラジオも昔からやりたいなと思っていたので、どうせなら全部一緒にやっちゃおう!と。

ユダ:これについては僕も良い考えだと思いましたね。何か引っかかりを作んなきゃ聴いてもらえないなとは思っていたので。昔は音楽にお客さんが付いてくれていたけど、現代ではその人のキャラクターにお客さんが付くっていうふうになってきているので。ラジオなり漫画なりで自分のキャラクターを説明したうえで最終的に音楽を聴いてもらうっていう流れを作るのは、間口を広げる為にも良いことだと思いました。

 

【MVについて】

-「MV撮ることになったから、空いてる日教えて」-

―MVは予算があって外注したもの(SKの夏休みリターンズ)とiPhoneでの自主制作によるもの(ヒロイン)とに分かれていましたが、二つのMVの経緯などを教えてください。

八代:2016年の夏頃にリターンズが形になったので、知り合いにMV撮れる人がいるから頼んでMVを撮ろうかなっていう経緯ですね。ディレクションに関しては文字を入れるというのを頼んだだけであとはお任せした形です。

ユダ:僕の方はもう、八代君から「MV撮ることになったから、空いてる日教えて」とだけ言われて。(笑) このMVが自分のスタンスの局地というか…積極性は出さないけどやってって言われたらやるっていうのが、新宿でカメラ回されながらラップしたりなんていうことに至ってしまったわけですね。(笑)

SENPUKU KAKUHENの夏休み リターンズ(MV)

―ヒロインはどういった経緯でしょうか?

ユダ:ヒロインもYoutubeに上げたいけど何にもないのもアレだからっていう感じですね。ただ、今回は自分たちでMV撮ればいいんじゃないという流れだった気がします。


ヒロイン(MV)

 

【アルバムについて(三曲ずつピックアップ)】

※インタビューを行うのに先立って事前に三曲ずつピックアップしておいてもらいました。

八代の1曲目-「ヒロイン」

-AVでよくある学校の壁からチンコが生えてるっていう…絶対にありえない状況-

八代:自分たちの作業進行のやり方のひとつとしてまず僕が歌を送ってそのうえでユダ君にラップを入れてもらうっていうのがあって、この曲も送ったときにユダ君に対してお金の匂いのする・ウケそうなラップをやってくれという発注をした曲です。Aメロは単語を羅列していく形になったので、そこの解釈はユダ君に任せようかなというくらいの気持ちでいたところ“地元 就職 そのまま結婚 まるでチンコが生えてる学校”というのを出されて…あの単語の羅列からこんな悪意を抽出するのか!と。(笑) これでほぼほぼ曲の方向性は決まってしまったような感じがしましたね。

ユダ:(笑) 僕も一言いっておくと、あくまで八代君の意見だと思うと何言ってもいいんじゃないかっていう。(笑)「そこは八代が言ったんすよ~(笑)」ですね。

―(笑) では、八代君“地元 就職 そのまま結婚 まるでチンコが生えてる学校”の部分の解釈についてお聞かせください。

八代:地元は人生のスピードが早いけど、自分たちはまだまだ足掻いていこうぜっていう感じですかね。

―これはまた新しい解釈ですね。(笑)

ユダ:ですね。(笑)

―実は、昨日のライブ終了後(ライブは2月26日に行われました)ユダ君に「これって学校教育から連綿と続く教育っていうものを就職・結婚も含め大枠で捉えた時に、なんだ僕らが教えてもらって学んできたものは結局本能のなすがまま生殖行為というものに至ってしまうじゃないかという事実への批判」という感じで自分の解釈を伝えたんですよ。

八代:あー、それは僕も似たようなことは思いました。反イデオロギーというか…でも自分も地元に帰れば友達とパチンコに行ったりもするから、そういう反イデオロギーに対してそれを全面的に肯定する立場を取れるかと言われたら微妙だなっていう、そういう面もあるよなっていうスタンスですね。

―なるほど。では、この意見を受けたユダ君自身の解釈はというと…。

ユダ:地元就職・そのまま結婚っていうのを簡単そうにやってのけてわたし幸せですみたいな顔してる人がいっぱいいるじゃないですか。僕にとってはそれって全然簡単なことじゃないんですよ。だから“まるでチンコが生えてる学校”の部分はそういう現実感のなさがまるでAVでよくある学校の壁からチンコが生えてるっていう…絶対にありえない状況の比喩になっているだけなんです。現実感のなさってことが連想できれば「まるで三億円当たった」でも良かった。(笑)

八代:僕もユダ君もそういうドメスティックなものに対してのアレルギーがあるみたいなんですね。これを言っちゃうと社会的な方面に話が進んじゃうけど、ユダ君の家も周りが仏教の中自分の家はキリスト教徒だったり、父親が昭和の親父よろしくかなり厳しい人だったりで、ユダ君っていうのはオイディプスのストーリーをまだ引きずってる人なんですよ。

ユダ:そうだね。子供の頃、父親は何でも出来るスーパーマンみたいな人だと思っていたし、実際いま現実に翻ってみても自分の年収は父親より明らかに劣っていたり…小さいときに感じたそういう感覚は今でも抜けきってない。あともうひとつ、自分の中で大きいのは社会で一般的に定義されるような幸せへの批判ですね。これが幸せでこうしなさいっていうのが嫌だし、もっと言えば女性が稼いで男が家事をしてもいいし結婚が全てじゃないし、同性愛で子供が作れない人はどうするんだよとか…。勝手に幸せを定義するんじゃねーよっていう気持ちは強いです。

八代:逆に僕は生れたときから父親がいないんですよ。親父は39歳で亡くなっていて、祖父・祖母と関わりはあったけど、自分にとっては男性・父親というもののロールモデルはなくて。親の世代の価値観はテレビの中でしか知ることが出来ないし、学校に行くと周りとはズレが生じるんですよね。父親の不在によって親の持つ価値観を体験できないっていうどうしようもないズレが。だからいまだにおじさんとすれ違ったりするとビビりますね。おじさん世代の外面しかわからないから、どう接していいものか分からないです。あとこういうことを他者に対して一段アクセル踏まないと言えないっていうのもなんだかな…と。そういう意味で二人とも小さい頃から一般的な社会っていうのとはズレてたかな。

ユダ:そうですね。ただ、僕らはそういうズレに対して感傷的になってお互いがシンパシーを感じてたというわけではなくて。単純に周りに溶け込めない演技の下手くそなやつがここにもいるなーうわぁ…って互いが分かってしまうので、そういう下手くそな奴同士が出会ったというだけですね。

八代:最後に付け足すと、ヒロインはこういったパンクな歌詞世界なのに曲はポップにまとまったっていうのが面白いなという作品でした。この曲でSKとして若干ブレイクスルーできた気はしています。

ユダ:僕としてもヒロインが出来て良かったですね。リターンズが文字通り第一期で作った「SKの夏休み」のリミックスだったから、次の一手をどうするんだろうという気持ちではあったので。きちんとポップなものを出してくれたね、八代君!という感じです。(笑)

 

ユダの1曲目-「私がトリちゃんになっても」

-バンドのストーリーに乗っかってるからこそ怖がらずにいろんなことを言える-

ユダ:これはShow me(Kid Ink)なんかが流行ってた時に使っていたような弦楽器じゃないプラグイン系シンセのコードをポン・ポンと鳴らす感じのやつと、この前Tofubeatsも茶化していたショッピングモールとかで使われている分厚いシンセ(シンセの和音を鳴らしたあとに上の音と下の音をコピーして、オクターブ上と下で別の楽器に差し替えて鳴らして分厚くするみたいなこと)みたいなのが流行ってるんだ…っていうことでやってみました。僕は楽曲の構造自体はパクれても、音痴なのでメロディーというか音程はパクれないんですよ。なので似せようと思ってもあんまり似ないっていうのがある意味恩恵ではあります。この時は八代君が作詞をするっていう話で進んでいたんですけど、僕はメロディーを作るって段階になって固まってきてもそこに乗せる上手い日本語っていうのが思いつかなくて。特に日本語に多くみられる母音を使った言葉は語感がもったりしてしまって…それが演歌みたいな伸ばす音ばかりだったら良いけど、自分はラップがベースにある分そういう方向ではなかったので日本語を乗せるという意識をしないまま子音たっぷりのホニャララ語の仮歌を入れて八代君に送ったら、そういう発音を全部無視した歌をつけてきました。

一同:(爆笑)

ユダ:メロディーは僕が考えたもので採用されてるんですけど、そのメロディーに乗せる言葉の発音(sやkを使った発音やtyやryといった語尾の発音)はまったく採用されなかったって感じですね。それはまあ良いとしても八代君の出来上がった歌聴いた時、二番の歌詞でさすがにキレそうになりましたけどね。(笑)(Aメロ早く終われ~というくだり)  でも僕も積極的にやっていない分そういうところにも目をつむっていなければなというスタンスを貫いた形です。八代君のアンサーに対して自分のスタンスを発動しました。

八代:だんだんふたりの責任が軽くなっていったよね。

―それは…責任の所在がなくなってきたっていうこと? (笑)

八代:いや、それはSKの責任になってるってことですから。

ユダ:うん。これはある意味良い事なんですよ。特にラップっていうのは一人称でMC○○さんが自分の意見としてスピーチするっていう歌唱法だから、言いたくても言えないことがあったりあんまりにもフィクションが過ぎるとそれはリアルじゃないって否定されたり…そういう弊害に対してもSKの物語として語ることによって言えちゃうんです。

八代:SKっていうバンドのストーリーに乗っかってるからこそ怖がらずにいろんなことを言えて、そのある種の軽さによって週刊連載というスピーディーな企画が実現しました。

―SKという別人格みたいなものがふたりの間に柱として出来上がってるんですね。

八代:そうですね。なので、週刊連載が終わってから僕が個人として「Can’t Take My Eyes Off You」のカバーをサンクラに上げたことから分かるように、僕自身はあくまでSKとは違うよというか…つまりSKのことは嫌いになっても僕のことは嫌いにならないでねっていうことなんですよ。(笑) あとこの曲を作ってた時期に周りにいるバンドマンのやつらが口を揃えて女の子をボーカルにすれば売れるみたいな趣旨の事を言っていて、いやそんなことねぇよっていう気持ちを込めました。トリンドル玲奈ボーカルにしてもお前らの状況はそんなに変わんないぞ、と。

―トリンドルはそういうハリボテとして存在する可愛い女の子の象徴という意味合いで?

八代:いや、そういう風に槍玉にあげたわけではなくて。(笑) 単純に語感が良かったので使いました。こういう議論についてはCreepy Nutsの「助演男優賞」っていう曲でうまいこと言ってるんですよね…でも僕らの方が時期的には先に書いてます。(笑)

 

八代の2曲目-「共犯者は闇の中」

-まるで僕が主犯で、なんなら一緒にやってるバンドメンバーは巻き込まれた被害者面-

八代:SKで曲を作っていく毎にだんだんと言いたい放題みたいになってきてまして、いくらSKという人格があるとはいえこれじゃいかんなと思って「ばさばさのネコ」という曲を書いたんですが更にそこから揺り戻されている時期。具体的な話をするとWindy Ladyっていうバンドのボーカルの人とよく電話をしていた時に、その人がメンバーの悪口を言ってくるんですよ。それで、僕としてはその人たちに対して特に個人的な黒い感情を持ってはいなかったんだけど、悪口を何度も聞いているうちになんとなく感化されてきてしまって「あれ?なんか、むかつくな…」というモードになってきたのが結実してしまった曲ですね。“情熱燃やしたステージもただの勘違い ただの通り雨”っていうフレーズからするするっと出てきちゃって…。これは自分たちにも当てはまるんですが、まるで僕が主犯でなんなら一緒にやってるバンドメンバーは巻き込まれた被害者面してるけど、「いやいやあなた達も共犯者だからね!主犯の僕を指さして、あいつクズだよねって嬉々として笑ってるけど乗っかってる君らも一緒だからね?」って気持ちが籠ってます。でもこの歌詞をユダ君に投げた時、彼ちょうど風邪をひいてまして…。(笑)

ユダ:そうそう!熱も38°くらい出てて、もういいやー!って感じだった。(笑)

八代:そんな感じで来た返しの極め付けが“作家もどきのニートワナビ 僕も仲間になりたいな”という…立場が変わればなんとやらと言いますが、立場の違いでこんなことを言い出すのか。おもしろいな、と。(笑)

ユダ:これに関しては何回か前のラジオでも言ってるんですけど、僕は褒められることが好きで好きでここまで来ていて。親にも先生にも周りの人にも近所の人にも良い顔をして、そういう風にしてお店をやって客商売するという世界で生きてきたので、不良で少年院入ったけど今はマイク一本持ってラッパーやってるぜとか、大学留年し続けて中退して社会にも全然コミットしなくてでもギターだけを握ってるぜみたいな、そういう人たちへの憧れがあって。僕はセーフティーネットを用意しながらでないと進めないけど、そういう安全柵も無く命綱もしないで「おい、失敗したら死ぬからな」っていう場所に行って生き続けてるやつらに憧れるんですよ。なのでその人達へのわりとストレートなリスペクトです。

八代:あ!?ストレートか!?それは承認欲求の化け物なんじゃねえか!?大丈夫か!?(笑)

 

ユダの2曲目-「Gifted Child」

-今まで何も言わずに我慢して黙ってたけど、お前ら間違ってんだぞ!-

ユダ:これは今までの流れを全部汲んでいて…。

八代:「旅をはじめたら、もう一度」という曲に入れ込んでたのと同時期の制作で、「旅を~」を送ったら全然反応がないくせしてこんな一発録りみたいな小一時間で作ったトラックを支持するなんて…馬鹿にしてるのかな、この人は?って思って。

ユダ:僕も悪意があってそっちを支持したわけではなくて、「Gifted Child」のギターの音が単純に良いと思ったし、やっぱり肩の荷がほどよくおりてる方が良いのかな?という意識でした。それでそういうひと悶着があった上で僕がこのトラックを使って歌なりラップなりを担当するっていうことになったから、言葉に関してはちゃんとやんなきゃなっていう気持ちから、これまでの流れを汲んで「今まで良い顔をし続けてきたけど…」っていうのに繋がっていった曲です。“人生の前半はママの為、残りは別のあなたの為”という節があるんですけど、僕は生れたときから10歳前後くらいまではママに褒められる為だけに生きていて、そこから先はその時好きだった女の子に褒められる為にしか生きてなくて…いつもだったらギリ止めておくようなこういう部分もあくまでSKでやっている意識にはなってるから、パーソナルなことを含め全部言ってしまった感はありますね。なので長らく扱ってきたこのテーマはここで決着がついた気はします。あと“イヴはチキンじゃなくてターキー 間違えたってお前ら平気”という節もありますけど、これは角が立たないように「そうだよね~」とか相槌打って相手に合わせてきた自分がいて、でも心のうちでは「今まで何も言わずに我慢して黙ってたけど、お前ら間違ってんだぞ!イヴに食べるのはチキンじゃなくてターキーなんだよ!そういうの気にすんだぞ!ふざけんなよ!」っていう怒りがあるってことです。

八代:そういうことだったのか~。実は僕も3曲って言われて選んだ時に「Gifted Child」を入れていたんです。発表した時こそなんか個人的な心情書き連ねてダセーこと言ってんなと思ってたんだけど、アルバムに入ってから聴いてみると結構曲が立ってて、なんか曝け出してるというか…。僕の好きなフレーズが“いつの間にやらニュースでよく見る 金を持たない弱い若者”ってところで、これは立場性をはっきりと言ってる固いラインだな、と。

ユダ:そこはSKじゃなかったらもうちょっと格好つけてるだろうからこんなこと言わなかったかもしれないね。

八代:そうだね。それでその後に“いつもストーリー影の通り いつもストーリー見えたように いつかそこに行けるように”って続くんだけど…、ここのストーリーっていうのはユダ君的にどういう解釈だったの?

ユダ:ここはね。正直に言うと歌のメロディーに合う語感の良い言葉が口をついて出たってだけなんだけど…(笑) その時思ってたことかー。八代君がサビのフレーズで大局的な事(全体を見回したテーマ)を言って、僕がその具体的な事例をラップするみたいなのがSKのパターンとしていくつかの曲で成り立っていて。でもこの曲は八代君が歌で介在しないから自分なりに大局的なことっていうのを心象風景として言ってみたという感じですかね。具体的に説明すると、僕は危ないからとか悪い人がいるからとかで行っちゃだめよみたいな道をいつも素通りしてきたんですけど、でもそこに飛び込んでみたら新たな出会いや発見があったかもしれないし自分には別の道もあったんじゃないのかっていう可能性を夢見ていて…それでいつかはそういうところに行けるように、今はひとりだけど頑張っていこうみたいなことを書いたんだと思います。僕が不良だったらみたいなね。

アウトサイダーな人たちに限らずそれ以外の人も全部ひっくるめてストーリーっていう言葉でまとめた、と。

ユダ:そうですね。

 

八代の3曲目-「Hercules」

-あなたが女の子だったらヤレるからいいけど、我儘な上にヤレもしないし。(笑)-

八代:これはユダ君にトラックから歌詞からメロディーから全振りしたナンバーですね。言ってみれば自分はヤシロイドです!(笑) そしたら我儘な彼女みたいな歌詞が送られてきて、俺のことを我儘な彼女と見てるのかー恐ろしいなーみたいなことを感じつつ歌った思い出があります。(笑)

ユダ:いやー、そこでまだあなたが女の子だったらヤレるからいいけど、我儘な上にヤレもしないし。(笑)

八代:こういうね、共同制作者のくせに共犯者じゃないというか…受け身で自己保身を図るっていうのが僕は表現者として本当に許せないんですよ!(笑)

―ちょっとユダ君の批判だけになって脱線してるので、「Hercules」の話に戻りましょう。(笑)

八代:楽曲のギミックについて言えば中盤で音が抜けるとこの構造が良い。これはユダ君がユーリ on ICEでかかってる曲を作りたいって言ってて。

ユダ:八代君が良いって言ってるブレイクのとこで音が半分になるっていうのはトラップというジャンルの特徴的な構造ですね。ユーリのというのは劇中に登場するレオ君の演技でかかる「Still Alive」のことです。やっぱり音階をパクるのは無理なので、ピアノの前半・分厚いシンセの後半という構造だけ持ってきました。(笑) あと女性的な歌詞になってるのはもちろん八代君を我儘な彼女になぞらえてるっていうのもあるんですけど、八代君っぽいセリフを僕がプロデュースするっていうのはおかしな話じゃないですか…そこでキャラクターっていうものが必要になったので別人格を立ててその人が喋ってるという体にして、八代君にはそのお話の登場人物になってもらいました。

 

ユダの3曲目-「プレイステーション入ってるかな福袋」

-本当の感動ってそんなに分かりやすくないだろっていうのがあって-

八代と筆者:プレイステーション入ってるかな福袋のフレーズを歌い出す2人)

ユダ:そうやって口ずさめるくらいキャッチーなんですよね、この曲。でも誤解を恐れずに言えば正直最初は特に好きでも何でもなくて。じゃあ何故これを選んだのかという経緯を説明すると、一番最初はみんなが楽しそうにバンドとかをやっていて羨ましいなあってとこから始まったかもしれない僕の生楽器あんまり好きじゃない病というのがあって。そうやって自分に言い続けてるうちに本当に嫌いになってきてしまって…これはやべーなと思い立ってそこからはなんてもったいない・愚かなことなんだろうという意識にはなっていったんです。でも、じゃあ生であることって何が良いんだろう?って改めて考えた時、ライブの為にスタジオに入って八代君が何気なくアコギで弾いて歌った「プレイステーション~」がめっちゃ良い曲に感じてしまってぶっちゃけ泣きそうになったっていうことがあったんですよ。八代君にこんなことで泣いてるのを見られるのは死んでも嫌だから絶対泣かなかったけど。(笑) でも本当になんて良い曲なんだろうとは思いました。生であることの良さってこういうことなのかなと。あんまり褒めるのもアレなのでひとつ悪口言っておくと、こんなに切ない感じの曲に出来てるならこんなバカっぽい歌詞つけないでもっと売れそうな歌詞にすりゃいいのに…って。まあでもそこにいかないのが八代君らしさなんだなと思います。(笑)

八代:うーん、ユダ君はいつも自分に対して(分かりやすい表現からは)ずらしてるっていう事を言うんだけど…でも本当の感動ってそんなに分かりやすくないだろっていうのがあって。

―本当の感動というのは八代君にとってどういう意味合いですか?

八代:そんなにポンと出てくるもんじゃないぞっていう…。

―感動っていうのを分かりやすく例えると、映画を観て泣く・ドラマを見て泣く・音楽聴いて泣く・本読んで泣くみたいなことがありますけど。

八代:そういうのは容易くない、簡単じゃないってことです。ユダ君はある意味メカニカルな面があって、音楽理論みたいなロジックが曲の中できちっと成立していて、そこに3~4%の偶然性があれば良い曲っていうのが生まれると思ってる節があるんですよね。

ユダ:それは、一個は僕が芸術っていうものを学問として勉強してしまったからだと思います。研究・分析・再構築ってやつですね。あともう一個は何度も言っちゃうけど音楽の事が本当に分からないから、コードとそれに乗っかるメロディーの味わい深さみたいなものから感じ取れる良さを受け取る能力が僕は低いんだと思います。メロディーに対する感受性が低い。音色だったりしたら分かるんですよ、例えばこのサンプリングされたバスドラの音が格好良いなあとか・このワブルベースのパラメーターの作り方が格好良いなあとかそういうのがギリ分かるラインで…僕はストレートに・ナチュラルに音楽を感じられてないのかなあっていうのもあって、理論でしか考えられないのかな、と…。これはちょっと八代君の意図するところとズレたかもしれません。あと付け加えてもう一個言うと、歌詞は音の為にある内容なんて別にいいやってやつか・きちんと一本のお話になっている感じの歌詞の内容をちゃんと伝えていくやつか、間を取って意味ありげなパンチラインをいくつか散りばめておいて相手に自由に解釈させるか(ユダ君曰く「エヴァンゲリオンみたい」)、僕にはこの3パターンぐらいしかないと思ってるんですよ。

八代と筆者:ほおほお。

ユダ:ほんとに直近のことなのであまり噛み砕けていないんですけど、音楽にも文学にも精通していて信頼のおける大学の友人がオザケンの「流動体について」という新曲の歌詞を絶賛してたんですよ。これはロジックに当てはめてということではなく、オザケンの言葉選びや表現のセンスの良さをなんですけど。僕もそのオザケンの曲はMステで見ていたんですが、ひとつも感動出来なくて。これが意味するのって事によると、八代君の歌詞がオザケンみたいに耳触りのいい言葉のチョイスをしていないだけで真面目にやってプレイステーションやら福袋やらなのか?そういったものを理解できない自分がズレてるのか?って思って、パッケージングする側の自分がこれだと僕がリスナーと乖離してるってことになるし…これはもう無理だなって最近弱気になってます。(笑)  僕は音楽の耳もあまり良くないけど、それ以上に詩っていうものを食べられないのかもしれない…だからリハビリしないと、とは思ってますね。あとはやっぱり一人称のスピーチでハッキリ言うっていう文化にいすぎたというか、僕はヒップホップ畑で育ってきた人間なので言葉遊びや比喩表現・皮肉を言うって事に関しては鍛え上げられたけど、何気ない言葉の並びに意味を持たせるみたいな詩的表現(行間を読むなど)は分からないので…修行しまーすって感じです。(笑)

 

【今後の活動と展望】

-今回のアルバムで個々人のストーリーには決着をつけた-

―今後の具体的な活動について教えてください。

八代:今まで週刊連載でやっていた曲のアップロードを、3月から隔週連載にして継続します。なので8月頃には3rdアルバムが出てるんじゃないかと思います。

ユダ:あと八代君とも話し合ってるのは、明るくて優しいやつを作ろうかなっていう…。

八代:今回のアルバムで個々人の生い立ちやら人生みたいな、そういうストーリーには決着をつけたのでそれをまたガタガタ言っても仕方ないなと。

ユダ:そうですね。

―では、最後に今後の展望をお願いします。

八代:僕はもうちょっとオケを快楽原則に寄せていこうかなって感じですね。理論の面も含めてここでこういう音が来たら気持ちいいなあみたいなそういう響くものを作っていこうと思ってます。

ユダ:僕はスタンスを変えずにいようと思っていて…最初の一手が八代君から来て、は?って思っても一回耐えて頑張るというか。でも、最近八代君が何やりたいみたいなのを具体的に提示してくれるようになってきたので凄く嬉しくて、これが続いてくれたら自分もやれることがあるんだろうなって思ってます。

―今後の活動も楽しみにしています。お二人ともありがとうございました。

 

インタビュー/テキスト:mko(@wltands)

 

SENPUKU KAKUHEN 2ndアルバム「SENPUKU KAKUHENの夏休み リターンズ」はBandcampにてNYPでリリースされています。↓DLはこちらから